その他

プロが教える大学入試、総合型選抜の志望理由書の書き方

この記事は、大学入試(総合型選抜)で合格につながる志望理由書の書き方を、初めて書く人にもわかりやすく丁寧に解説します。

「何を書けば良いかわからない」「まとまらない」「どこから手をつければ良いか迷っている」——そんな受験生に向け、書くべき要素、全体構成、文字数制限に合わせたまとめ方、実際の書き進め手順やよくある失敗とその直し方まで、具体例つきで解説します。これを読めば、どなたでもスムーズに読み映えのある志望理由書を書けるようになります。

1. 志望理由書で評価されるポイント(大学側の視点)

まずは大学側が志望理由書のどこを見て評価しているかをまとめておきます。あくまでも推測ですが、これまでの指導経験上おおよそ正しいと思います。

  1. 志望動機の明確さ:なぜその学部学科で学びたいのかが具体的に分かるか。
  2. 志と将来像の一貫性:学びたい内容と将来の進路がつながっているか。
  3. 自分の経験と学習意欲:過去の経験が志望にどう結びつくか、主体性が見えるか。
  4. 大学との「相性」:大学の教育方針・研究テーマ・施設・地域性など、その大学を選ぶ理由。
  5. 文章表現力:読みやすさ、論理の飛躍がないか。字数内で簡潔に伝えられているか。

大学側は入学後にちゃんと勉強してくれる人、大学に貢献してくれる人に入学してもらいたいと考えているのでそれを読み取れる内容かどうかが重要です。

「明確な志望動機があり、将来像を持っている人の方が大学入学後もまじめに勉強してくれる可能性が高い」と判断するのは自然な考えでしょう。特に主体的に学べる人はごく少数なので、その点はしっかりアピールした方が良いですね。

その大学で学びたい理由も必要です。単に「〇〇を学びたいから」というだけでは「じゃあ他の大学でもいいよね」と思われてもおかしくありません。

伝わらなければ意味がないので読みやすい文章も重要で、「修正する時間はあるのに読みにくい文章を提出する」ということ自体に低評価をする可能性は十分ありえます。

2. 書くべき要素と構成

1の内容を踏まえて、具体的に書くべき要素と構成をまとめておきます。

  1. 最初の一文は志望理由の核
  2. きっかけ、具体的な経験と学んだこと
  3. その大学・学部学科を選んだ理由と将来の目標とのつながり
  4. 読みやすい結び

2.1 最初の一文で何を学びたいかを書く

まず最初に志望理由の核となる部分を短い文で書きましょう。「自分はこれを学びたい!」「自分はこの職業に就きたい!」など自分の人生の方向性を示すことで、読み手もその方向を意識してその後に続く文章を読むようになります。そうすることで、読みやすさや説得力を増すことができます。

2.2 きっかけ、具体的な経験(課外活動、学習、アルバイト、ボランティア等)と学んだこと

なぜそれを学びたい、その仕事をしたいと思うようになったか、そのきっかけや経験を書きましょう。例えば、「部活で怪我をしてリハビリをしているときに物理的だけではなく精神的にもサポートしてくれた理学療法士に憧れて目指すようになった」など。こういったエピソードがあると、あなたの人物像を想像しやすくなるだけではなく入学後もその意志を持って勉強してくれるだろうと評価しやすくなります。

志望理由書で最も重要なところはここです。後述の大学のカリキュラムや制度などは誰でも調べられる情報ですが、あなたの経験はあなただけのものです。あなたがどういう経験をしてなぜその大学、学部学科で学びたいのかを理解してもらうためにあなた自身の経験を説明するのはとても重要です。

ですので、この部分は他の部分よりも時間をかけ自分自身の経験を深く掘り下げて、その大学に入学したいという熱意が十分に伝わるような文章を書き上げましょう。

2.3 その大学・学部学科を選んだ理由と将来の目標とのつながり

すでに書きましたが、単に「〇〇を学びたい」というだけなら他の大学でも学べるので、それだけ書いても良い評価は得られません。その大学のカリキュラム、施設、制度などを踏まえて説明しましょう。

パンフレットやホームページに書かれている内容で興味を持った内容、オープンキャンパスで魅力を感じた内容などが書きやすいと思います。例えば、「(医療系で)実習制度が充実している」、「(理系で)本格的な実験講義がある」などはその大学の魅力となるでしょう。ただし、書くのは学業に関係する内容に絞りましょう。志望理由として思いつくのが「学食が美味しかった」「キャンパスが綺麗」といった内容では自分は勉強する気ないですと言ってるようなものですからね。

将来の目標と大学で学ぶ内容がつながっていることを説明することで志望理由の説得力が増します。卒業後にどういうふうに社会に貢献したいかも書けるとなお良いです。

「この人はうちで学んでもらいたい」「うちで学んだら良い〇〇(看護師など)になりそう」と思わせられれば勝ちです。

2.4 読みやすい結び

文章の最後は強い言葉で印象付け「だから自分は貴学で学びたい!」という意志を示しましょう。短く読みやすい文章にしましょう。少し背伸びをした表現で書くくらいがちょうどいいです。過剰になりすぎても良くないですが。

3. 文章例

書くべき要素についてわかったところで、文章の良くない例と良い例を見てみましょう。良くない例はやや大袈裟に書いてありますが、その方が良い志望理由書の書き方が理解しやすいはずです。

3.1 良くない例

私は将来の夢を実現するために大学進学を考えてきました。

人の役に立つことに関心があり、そのためには専門的に学ぶことが必要だと感じ、大学で学ぶことによって自分を成長させ、社会に貢献できる人になり、責任も伴いますが、それを乗り越えることでやりがいが得られると考えています。

進路を考える中で貴学に出会い、魅力を感じました。貴学は教育内容が充実していると思います。また、学びを深める環境が整っていると思います。基礎から応用まで幅広く学べることに加え、経験を積む機会もあり、学生一人ひとりの成長を支えてくれると感じました。こうした環境であれば、自分の夢に向かって努力し続けることができると確信しています。また、説明会や案内を通して大学での学びを具体的にイメージでき、学習意欲が高まりました。

これらの理由から、私は貴学で学びたいと強く思っています。

3.2 良い例

私は物心ついた頃から保育園の先生になることを夢見てきました。

保育士として働く母の姿を身近に見て、子どもに寄り添い成長を支える仕事の意義を強く感じるようになりました。高校生になってからは学童保育でのアルバイトを経験し、子ども一人ひとりが持つ個性に向き合う楽しさや、時には対応に悩む難しさを実感しました。この経験を通して、子どもの命を預かる責任の重さを改めて理解すると同時に、成長を間近で支えられることの大きな喜びを知り、保育士を目指す気持ちが一層強まりました。

進路を考える中で、保育士の資格取得に直結する学びができる大学を調べるうちに、貴学のカリキュラムに大きな魅力を感じました。基礎から専門的な知識・技術へと段階的に学びを積み上げられる仕組みは、自分が保育士として成長していく過程をしっかりと描けるものだと感じています。特に、3年次からの保育園実習は実際の現場で子どもと関わりながら学べる貴重な機会であり、自分の力を試し、さらに伸ばせる場になると考えています。オープンキャンパスで模擬授業に参加した際には、先生方が現場を意識した指導をされていることに感銘を受け、自分もその学びの中で成長していきたいと強く思いました。

私は将来、子どもや保護者に信頼される保育士となるために、貴学での学びを全力で活かしたいと考えています。

 

良くない例は極端な例で、ここまで酷い文章を書く人は見たことがありませんが、良い例と比べると何が重要なのかわかりやすかったはずです。この2つの文章を読み比べて良くない例の方が良いと思う人はいないでしょう。

次の項目で、志望理由書の書き進め方や書く上での注意点をさらに詳しく解説しているので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

4. 書き進め方、まとめ方

どうやって書けば良いかわからない、とっかかりがわからないという人もいると思います。文字数の多さ、あるいは少なさを気にして書けないという人も少なくないでしょう。そういう人も以下の手順に沿って進めばスムーズに書けるはずです。

  1. 大学の情報収集
  2. 自分の過去の活動を書き出す
  3. 骨組み作成
  4. 第一稿執筆
  5. 推敲
  6. 誰かに読んでフィードバックを受けるときの注意点

4.1 大学の情報収集

まずは大学の情報収集から始めましょう。入試パンフレット、募集要項、大学webサイト、ゼミ/研究室webサイト、などを見てどういったカリキュラムがあるのか、どんな制度があるのか、どんな施設があるのか、どんなゼミ/研究室があるのか、など調べましょう。特にその大学独自のもの、大学が推しているものは重要です。その中から、志望理由書に書くべき内容を絞っていきます。

4.2 自分の過去の活動を書き出す

志望するきっかけがすぐに思いつく場合はそれでいいですが、明確に思いつかない人もいると思います。自分では志望理由書に書くほどでもないと思うようなことでも、整理していけば十分理由として書けるということもあります。ただし、その性質上この過程は自分だけでやるのは難しく、指導者が必要であることが多いです。

4.3 骨組み作成

いきなり文章を書くのは難しいという人もいると思います。そういう場合、まずは箇条書きで良いので文全体の構成を考えましょう。何も考えず書き始めるより「こういう構成で書こう」という大まかな方針があった方が書きやすいですからね。

これについては先ほど書いた2を参考にしてください。基本的には2の要素、構成で書けばOKです。

4.4 第一稿執筆

志望理由書の文字数は、少ないもので400字、多いもので3000字くらいが一般的です。「志望理由、大学でやりたいこと、自己アピールをそれぞれ1000字ずつ」などのタイプもあったりします。

どのタイプでも共通して言えることは、「最初は制限文字数より多めに書くこと」です。少なく書くとあとで追加しなければいけなくなりますが、その場合、文の構成が崩れやすくなったり、内容が薄かったりすることが多いのであまりよくありません。多めに書いてあとで削る方が、文と文を比較しながら選定できるのでより良い文章になりやすいです。

と言っても、多すぎると削るのが大変なので制限が400字なら500~600字程度、1000字なら1200~1300字程度、3000字なら3200~3400字程度を目安として書いてみましょう。制限文字数×1.1~1.2くらいが良いと思います。

4.5 推敲

推敲するときは以下の点を意識して文を修正しましょう。誤字脱字、文法ミスをチェックするのは当たり前なので割愛。

  • 「きっかけ」「志望理由」「大学での学び」「将来の目標」が繋がっているか
  • 具体的に書かれているか
  • 1文が長くなり過ぎていないか
  • 読点が多すぎないか
  • 専門用語を使っていないか
  • 比喩、暗喩を使っていないか
  • 文の終わりが同じ表現ばかりになっていないか

上2つはすでに書いた通りです。3つ目以降は文の読みやすさに影響するものです。

1文が長くなりすぎると何を言いたいのかわかりにくくなるので、適度な長さで書くよう心がけましょう。用紙の種類にもよりますが長くても1文につき3~4行程度です。読点(、)も少なすぎても多すぎても読みにくいので気をつけましょう。1つの文中に用いる読点は多くても2~3個。それ以上になるときは文を分ける。これを意識するだけでも読みやすい文章になります。

専門用語や一般的でない用語を使うのは避けましょう。例えば、吹奏楽部に所属している受験生がその部活での経験を書く際に「コンサートミストレス」という言葉を使うのは避けた方がいいです。吹奏楽部やそれに類する経験や知識がないと「コンサートミストレス」の意味がわからず、文の意図が伝わりにくくなります。どうしてもその言葉を使いたい場合は、それ自体の説明を書くという手もありますが、その分、文字数が増えるし文脈が一旦そこで止まるのであまりよくありません。

比喩、暗喩もなるべく避けた方がいいでしょう。比喩、暗喩は誤解の元なので、文学などそういう表現自体を楽しむ目的以外の場合は使わない方が良いです。志望理由書は書き手と読み手がコミュニケーションを取れない状況で文章だけを読んで評価するので、比喩や暗喩を使うのは良くないですね。

1文のおわりが「〜だと思います。」など同じ表現ばかりになるのは良くあることです。文法上の問題があるわけではないですし、文の論理性を損なうわけではないですが、同じ表現ばかりだと読むテンポ、読感が悪くなるので、できれば少し表現を変えるといいでしょう。あくまでも、できればなのでそこまで気にする必要はありませんけどね。

細かく言えば他にもありますが、優先度の高いものはこのくらいです。これを意識して書けばより良い文章が書けます。

また、「この話を入れようか。ここは削るか。」など文構成で迷うこともあると思います。そういう場合は、3パターンくらい作って比較しましょう。比較してみると、似たような話を繰り返していたり、構成的に読みにくい順序になっていたり、話があっち行ったりこっち行ったりして何が言いたいかわかりにくい文章になっていたり、そういう部分が見えてきます。それを修正していくことでより良い文章が書けます。

推敲は最低でも2回はした方が良いです。推敲を繰り返すとより良い文章になっていきます。ただし、やりすぎると混乱して変な文章になりがちなので、多くても3~4回にしておきましょう。

4.6 誰かに読んでもらいフィードバックを受けるときの注意点

誰かに読んでもらってフィードバックをもらうときは、できれば専門家の人に読んでもらいましょう。友達や保護者、学校の先生でも良いんですが、専門的な観点から見れない人のフィードバックは逆効果になることもあるので要注意です。

例えば、私が指導していた受験生に保護者に見せたら「表現や言葉遣いがお前らしくない」と言われ、砕けた(口語に近い)表現で書き直した人がいましたが、これはダメな典型例です。

まず大前提として、その大学学部学科への入学を志望する理由、大学でちゃんと勉強する意志が伝わるかが重要です。それらについてのダメ出しであれば良いですが、この例はそれとは無関係です。そもそも、大学側はあなたのことを全く知らず、どんな文章が「あなたらしい」のか判別できないので、それ自体を評価することはできません。

誰かにアドバイスをもらう時は、その内容が志望理由書の内容へのフィードバックとして論理的であるか、整合性があるかを考えましょう。

5. さいごに

以上で総合型選抜の志望理由書の基本的な書き方の解説はおわりです。学校や塾でもちゃんとした書き方を指導できる人は少ないと思います。私が指導するときは、生徒と細かくコミュニケーションを取りこの記事には書かれていない細かい点や疑問もサポートしています。総合型選抜の指導を受けたい方は下記の連絡先からご連絡ください。

オンライン指導、生徒受付中!

神奈川県公立高校入試、都立高校入試、大学入試で個別指導20年、オンライン指導9年の私がマンツーマンで丁寧に指導します。

  • 対象学年:中学生、高校生、浪人生
  • 指導科目(高校):数学、物理、大学受験指導(総合型選抜もOK)
  • 指導科目(中学):数学、理科、高校受験指導
  • 指導形態:MicrosoftTeamsによるオンライン指導
  • 指導曜日・時間:要相談
  • 料金:1時間7,000円(税別)
  • 体験指導:60分(ヒアリング含む)

 

体験指導をご希望の方、オンライン指導に関してご質問がある方は以下のお問い合わせページからご連絡ください。体験指導や指導料金などについて詳しい資料をお送りします。

お問い合わせ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA