都立高校入試の理科の勉強方法をまとめました。理科は他の科目と同様、毎年同じ構成なので対策がしやすいですが、出題単元が絞りにくいので勉強するのに時間がかかります。効果的な勉強方法や何に気をつけて勉強すべきかなど総合的に解説したので参考にしてみてください。
天体でわかりにくいところをわかりやすくするコンテンツを作ったのでその記事も合わせてご覧ください。
目次をタップすると該当箇所まで飛ぶので時間がない人は読みたいところから読んでください。
問題構成と配点
まずは問題構成と配点を確認しましょう。ここでは平成30年度の問題を例にします。
第1問 | 小問集合 | 4点×7 | 28点 |
第2問 | 小問集合 | 4点×4 | 16点 |
第3問 | 地学 | 4点×4 | 16点 |
第4問 | 生物 | 4点×3 | 12点 |
第5問 | 化学 | 4点×3 | 12点 |
第6問 | 物理 | 2点×2、4点×3 | 16点 |
問題構成は平成25年度〜平成30年度で毎年同じで、第1問と第2問が小問集合、第3問〜第6問が各分野の大問(実験)です。配点は年度によって多少違いがあります。
注目すべきは第1問と第2問で40点分もあるということです。第3問〜第6問の問題に比べると簡単な問題が多いので、ここを優先して勉強しましょう。
以下でそれぞれの特徴と出題パターンを解説します。
平成30年度以外の問題はこちらを参照してください。
第1問:小問集合
平成30年度の第1問はこんな感じです。
第1問はこんな感じの小問が6〜7問出題されます。各分野からまんべんなく出題されますが、どれも基本的な知識で解けます。目標点が何点であれ第1問は1ミス、24点/28点くらいでおさえたいところです。
第2問:小問集合
平成30年度の第2問はこんな感じです。
こんな感じの問題が4問あります。問1〜問4は生徒が書いたレポートをもとにした問題という設定になってますが、それぞれは独立しているので実質小問集合と同じです。問われているのは第1問と同様に各分野の基本的な知識ですが、レポートを読まないと解けないようになっているので第1問より難しいですね。
第3問:地学
平成30年度の第3問はこんな感じです。
問題の文量が多いので全ては載せませんでしたが、問題文の観察の説明だけで1ページを使っています。第3問〜第6問はここが最大の難点ですね。各単元の知識だけではなくそれをもとにして問題文を読んで内容を正確に把握する力も問われます。
読解力がない人はキツいですね。
問部分はこんな感じです。
これを見るとわかりますが、実は最初の方の問題はそんなに難しくないです。どちらの条件からでも2択に絞っていけるタイプの単純な四択で、第1問や第2問の小問集合と同じです。どちらかというと重要なのは最初の観察や実験の説明を読んで理解することの方です。
第3問:地学の出題パターン
平成25年度〜平成30年度の第3問の出題パターンを見てみましょう。
- 平成25年度:天気(表の読み取り、飽和水蒸気量、天気図)
- 平成26年度:天体(太陽と月の日周運動、地球の自転、地球・月・太陽の位置関係、月の満ち欠け)
- 平成27年度:地層(化石と年代、柱状図、地層が堆積した環境)
- 平成28年度:天体(金星、星座、月)
- 平成29年度:天気(気温などのグラフ読み取り、天気図)
- 平成30年度:地層(火山、岩石の種類とでき方、地質年代と生き物、大地の変化)
だいたいこんな感じです。
これを見ると同じパターンは連続で出題されなさそうなので、平成31年度は天気か天体の問題が出題されそうです。
天気では表やグラフからその日の天気、気温、風向きなどを読み取らせる問題や適した天気図を選ばせる問題が平成25年度と平成29年度の両方で出題されているので、その辺りは最優先で勉強しましょう。
天体は太陽、月の日周運動が頻出です。月や金星の見え方も頻出なので最優先で勉強しましょう。
ということで地学は「天気」「天体」を最優先で勉強しましょう。
第4問:生物
平成30年度の第4問はこんな感じです。
第3問ほどではないですが、第4問も問題設定を読んで理解できるかどうかが最大のポイントになります。問1は比較的簡単な問題で、実験内容にあまり関係なく知識があれば解ける問題が多いです。
第4問:生物の出題パターン
平成25年度〜平成30年度の出題パターンを見てみましょう。
- 平成25年度:消化酵素、デンプン
- 平成26年度:花のつくり、遺伝
- 平成27年度:光合成、デンプン
- 平成28年度:花のつくり、遺伝
- 平成29年度:消化酵素、デンプン
- 平成30年度:光合成、蒸散
第3問よりもさらに問題傾向が絞りやすいですね。第3問と同様に連続して同じパターンが出題されることはなさそうなので、平成31年度は「花の作り、遺伝」か「消化酵素、デンプン」が出題されそうですね。
「花のつくり」では維管束や根のつくり、花のつくりなどの基本知識は問1でほぼ間違いなく問われるので、最優先で勉強しましょう。
「遺伝」では丸としわが何対何でできるかなどの法則はもちろん、有性生殖・無性生殖、自家受粉などの知識も問われます。
光合成はデンプンか蒸散と合わせて出題されることが多いですね。
第5問:化学
平成30年度の第5問はこんな感じです。
第3問、第4問と同じく、問題設定を把握することが最大のカギですね。第3問〜第6問は受験勉強をしていると何度となく出くわす問題なので、パッと見ただけでだいたいどんな問題なのかがわかるようになってきます。そうなれば問題設定も把握しやすくなるので、そのレベルになるまで問題演習を繰り返しましょう。
第5問:化学の出題パターン
平成25年度〜平成30年度の出題パターンを見てみましょう。
- 平成25年度:酸性とアルカリ性の水溶液、中和
- 平成26年度:酸性の水溶液と金属の性質、電池
- 平成27年度:マグネシウムの酸化反応、マグネシウムと塩酸
- 平成28年度:水の電気分解、中和
- 平成29年度:物質の性質、発生する気体、酸化と還元
- 平成30年度:電池、電気分解
第5問も化学分野ではよく見る問題パターンが多いですね。どの年度も大きく分けて二つの単元から出題されているのが特徴です。
平成30年度が電池、電気分解なので平成31年度は酸性・アルカリ性や中和が出題されそうですね。
また、「各問はほぼ独立していて問1が解けなかったからといって問2が解けないということはほぼない」というのも特徴です。例えば、平成30年度の問2は塩化銅水溶液の電気分解の問題で、実験1の結果と実験2の結果の正しい組み合わせを選ばせるものですが、問1の問題とは直接関係ありません。これは第3問〜第6問で全体的に言える特徴です。
第6問:物理
平成30年度の第6問はこんな感じです。
第6問は物理ですね。第3問〜第5問までと同じように実験の結果から正しい選択肢を選んでいく問題です。物理は化学とならんで苦手な人が多い分野なので、苦手な人は勉強を後回しにしてもいいと思います。
第6問:物理の出題パターン
平成25年度〜平成30年度の出題パターンはこんな感じです。
- 平成25年度:物体にはたらく力、物体の運動
- 平成26年度:電流と磁界
- 平成27年度:滑車、仕事とエネルギー
- 平成28年度:消費電力、エネルギーの移り変わり
- 平成29年度:質量の異なる物体の運動とエネルギー
- 平成30年度:電流と磁界
第6問の出題パターンも第3問〜第6問と同じように、同じパターンが連続して出題されることはなさそうなので、平成31年度は物体の運動や電力、エネルギーに関する問題が出題される可能性が高そうですね。
物体にはたらく力、物体の運動、仕事とエネルギーでは「ばねの伸び」「傾斜」「滑車」「質量の異なる球体と木片」に関する実験がよく出題されています。
エネルギーの移り変わりでは、エネルギーの変換に関する知識は必須ですね。主に電気エネルギーが何エネルギーに変換されたかが問われます。
電流と磁界は誘導起電力、電磁誘導は超頻出なのでしっかり勉強していた方が良いでしょう。また、電流、電圧、抵抗の関係やそれに関するグラフの読み取り、計算、回路なども頻出です。
オススメの教材
問題構成と配点がわかったところで、それに合わせたオススメの市販教材を紹介します。
その前にまずは受験勉強をする時に使う教材の種類をまとめておきます。
- 参考書
- 総合問題集
- 小問集合対策用の問題集
- 分野ごとの問題集
- 50点確保用の問題集
- 70点以上を目指す人用の問題集
- 過去問
- 模試
どれを購入すべきかは個人差がありますが、私が指導する場合は①②③⑦は必ず購入してもらっています。あとは必要に応じてって感じですね。塾に通っている人は塾の教材でOKだと思います。その理由については後述します。
参考書
参考書では以下のものがオススメです。
この3つはだいたい同じなので好きなものを選んでOKです。本屋で手にとってみて気に入ったものを購入しましょう。参考書は主にわからないところを調べる用です。これらの参考書は別売りの問題集もありますが、受験勉強では必要ないです。
総合問題集
総合問題集では以下のものがオススメです。
これも好きな方どちらか一方を持っていればOKです。個人的には「超効率問題集」の方がオススメです。
総合問題集は一冊で第1問〜第6問までの頻出パターンが学習できるやつが良いです。市販の教材なので、都立高校入試に完全に対応している訳ではありませんが、どの都道府県も問題は似たようなもんなのである程度はこれで対応できます。
小問集合対策用の教材
第1問と第2問は各分野の基本的な知識が問われる小問集合です。その演習をするには以下の教材を使うのがおすすめです。
これは一問一答形式で基礎知識だけを演習できる問題集の中では一番良いですね。第1問、第2問の小問集合対策だけではなく、各大問の問1など比較的簡単な問題の対策にもなります。
分野ごとの問題集
分野ごとに強化したい場合は以下のものがオススメです。
他の分野のものもあるので強化したい分野のものを購入しましょう。
50点確保用の問題集
受験を成功させる最大のコツは「みんなが解ける問題を落とさないこと」です。以下の教材は入試で50%以上の受験生が解けた問題だけを集めた問題集で、これをやれば入試で絶対に落とせない問題のトレーニングができます。
70点以上を目指す人用の問題集
上記の教材のシリーズで50%以下の人しか解けなかった問題だけを集めた問題集もあります。
70点以上を目指す場合、標準的な問題だけではなく難しい問題も正答できなければいけません。その練習にもってこいの問題集です。
過去問
入試の問題はある程度の傾向があるので、まずは過去問を見てどの辺を勉強すれば良いのかを研究するのが最優先です。出題傾向を知った上で勉強することで「あ、これは過去問に載っていたパターンだな」と意識して勉強できるのでより頭に残りやすくなります。
出題傾向についてはすでに詳しく解説しましたが、必ず自分でも確認するようにしましょう。
過去問を購入するときは「掲載年数が多いもの」を選ぶようにしましょう。過去問演習で最も重要なのはたくさん解くことですからね。市販のものでは以下の教材がオススメです。
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ま、一番有名なやつですね。7年分あるので十分トレーニングができます。
模試
模試は定期的に受けた方が良いです。「W合格もぎ」と「Vもぎ」が有名ですね。塾に通っている受験生はこのどちらかを受けている人が多いと思います。
実はこの二つの模試はネットで購入することができます(以下のリンク先参照)。
塾に通ってなかったり、ギリギリで通い始めた人は自分で模試を購入して練習するとかなり効果的です。過去問と合わせてやれば入試対策はバッチリです。もちろん、判定や偏差値は算出されないのでその点は実際に模試を受けるのには劣りますが、本番に限りなく近い形での問題演習は効果的です。
模試は受験が近づいてくると売り切れることがあるので、早めに購入するようにしましょう。
模試の活用方法
模試は「実力チェック」「合格判定を見るもの」ですが、「最大の復習チャンス」と考えておくとより効果があります。以下のことを実行すれば必ずレベルが上がります。
- 模試を受けたその日に自己採点する
- すぐに解説を読んでできる限りの問題を理解する
- 解説を読んだらすぐに解き直す
- 1週間後に解き直す
模試は受験生にとって本番同様のトレーニングをするための唯一のチャンスです。模試を受けた直後にちゃんと復習することで、いつもの勉強以上に身につきます。解説を読むだけではなく、必ず解き直すようにしましょう。解説を読んで「理解したつもり」になる生徒は驚くほど多いですから。①〜③をやっている人はいると思いますが、④をやっている人は少ないです。時間がたったあとで解けるかどうかを確認するのは勉強では非常に重要です。
①〜③はできれば模試を受けた当日にやりましょう。疲れてできない場合でも翌日には必ずやるようにしましょう。受けた直後のほうが「解けた問題」「解けなかった問題」「よくわからなかったところ」などが頭に残っていますからね。
塾教材について
最初の方で書きましたが、市販の教材よりも塾の教材の方が圧倒的に優秀です。なぜかというと市販の教材は全国の公立入試全般に対応した教材しかありませんが、塾教材は神奈川県の入試に特化しているからです。下記の教材はその代表例です。この教材を使うためだけに塾に通う価値はあります。
オリジナルの教材を使っている塾も少なくないですが、それもかなり有効です。私の経験上、講師の質は当たり外れ(とくに外れ)が大きいのでその点では塾に通うメリットはあまりありませんが、塾の教材はその価値が大いにあると言えます。
ちなみに私は仕事柄、これらの塾教材を入手することが可能なので、私の生徒には市販教材ではなく必ず塾教材を使わせています。ホントにかなりの差がありますからね。特に学力的に中の上以下の生徒は結果に大きな差が出ます。
基本的な勉強方法
基本的な勉強方法を解説しておきます。ここに書いてある方法を実行すれば確実にレベルが上がるので参考にしてください。
- 「3回復習」する
- 1週間単位で勉強する
- ○△×で管理する
- 最初に過去問研究する
- 出題傾向ごとに勉強する(過去問をヨコに使う)
- 最後に本番同様のトレーニングをする(過去問をタテに使う)
以下で一つずつ紹介していきます。
「3回復習」「1週間単位の勉強」「○△×で管理」について
受験勉強に限らず、勉強で最も重要なのは復習です。以下のように勉強することで、しっかり定着するようになります。
- 月曜日:勉強する→自分でテストする→寝る前にテストする
- 火曜日:月曜日の内容をテストする→勉強する→自分でテストする→寝る前にテストする
- 水曜日:火曜日の内容をテストする→勉強する→自分でテストする→寝る前にテストする
- ・・・
- 日曜日:月曜〜土曜の内容をテストする
「復習する」だと見て終わりにしてしまう人も多いですが、それでは身につきません。効果のある復習は自分でテストすることです。
毎回全ての問題をテストするのは時間的に厳しいので、テストすべき問題を自分で判断しないといけません。そのために解いた問題は○△×の印をつけて管理しましょう。「○:100%OK」「△:微妙」「×:解答見てもさっぱりわからん」みたいな分け方にするのが基本ですね。
この勉強方法はどの科目でも使える基本中の基本なので、身についていない人は受験勉強を機に身につけておきましょう。そうすれば高校へ入っても勉強で困らなくなりますよ。
勉強の進め方
理科の勉強の進め方としては以下の流れで勉強すると効果的です。
- 総合問題集か小問集合対策用の問題集で第1問、第2問対策をする
- 過去問の第1問、第2問だけ全年度分解く
- 総合問題集や分野別問題集で第3問〜第6問対策をする
- 過去問で第3問〜第6問を全年度分解く
- 過去問をもう一度解き直す
- 模試を解く
まずは合計で40点分もある第1問と第2問で1ミスでおさえられるレベルまで勉強しましょう。第3問〜第6問の方が難しいのでここで点数が取れないとキツくなります。特に70点前後を目標としてる人は。
過去問は惜しまず使っていきましょう。小問集合対策の勉強が終わったら過去問で第1問、第2問だけひたすら解きまくりましょう。第3問〜第6問も基本的には同じです。
最後にもう一度過去問を解いて仕上げましょう。この時は時間を計って本番同様のトレーニングをしましょう。
①〜⑤までやって足りない場合は模試を購入してトレーニングしましょう。
この流れでやれば基本問題を取りこぼすリスクをおさえつつ、段階的にレベルアップしていくことが可能です。分野ごとに勉強する方法もありますが、それだと一つの分野に時間をかけすぎて時間が足りなくなり、ある分野の勉強量が不足するなどのリスクがあります。
まとめ
最後にまとめておきます。
- 第1問、第2問は小問集合
- 第1問、第2問で約40点分もある。
- 第3問〜第6問は大問(実験)
- 第3問〜第6問は出題パターンがほぼ決まっている
- 3回復習と1週間単位の勉強が効果的
- まずは第1問、第2問の対策からスタートする
長くなりましたが、ここまでちゃんと読んだ受験生はきっと志望校に合格できるはずです。もちろん読んだだけではなく実行しないと意味がないので、最後まで諦めず頑張ってくださいね。
神奈川県公立高校入試、都立高校入試、大学入試で個別指導18年、オンライン指導8年の私がマンツーマンで丁寧に指導します。
- 対象学年:中学生、高校生、浪人生
- 指導科目(高校):数学、物理、大学受験指導
- 指導科目(中学):数学、理科、高校受験指導
- 指導形態:SkypeまたはZoomによるオンライン指導
- 指導曜日・時間:要相談
- 料金:1時間6,000円(税別)→5,000円(2月3月指導開始の方だけ!)
- 体験指導:60分(ヒアリング含む)
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