シリーズ第6回 プロ講師が実践する個別指導の指導方法 大学受験生編 「4章 自学レベルを上げる方法 その1」

4章 自学レベルを上げる方法

2つのルールは指導する上での最低限必要なものです。ただし、これだけでは十分な指導とは言えません。それに気づかずにただダラダラと解説するだけの指導を毎回してしまう講師も少なくありません。

自学レベルを上げると言ってもわかりにくいので、具体的に生徒に身につけさせると良いスキルを挙げておきましょう。

  1. 丸つけができる
  2. 丸つけ+直しができる
  3. ◯、×、△をつけられる
  4. 適切なやり方で演習ができる
  5. レベル1の質問ができる
  6. レベル2の質問ができる
  7. レベル3の質問ができる
  8. 説明できる
  • 適切なやり方で復習ができる
  • 適切なタイミングで復習できる
  • 模試をうまく使える

これらのスキルはだいたいこの順序に身につけていくことになります。また、そもそも「身についた」と明確に言えるはっきりとした境界線のようなものはありません。私はここに書いてあるような基準でそれを判断していますが、1つの目安として考えてください。

4.1 「丸つけができる」「直しができる」「◯、×、△をつけられる」

ここに書いてあることは小学生でもできますが、けっこう奥が深いものです。学力が高い人はこれらのスキルのレベルが高いです。

それを一言で表すと「1を聞いて10を知る」感じです。

学力が高い人は低い人に比べると同じ勉強量でもそこから得られる経験値が多いです。その原因の1つは、自分のやったこと(勉強)が次の勉強に活かせるということを知っているからです。

「ああ間違えた」

となったときに単純に×をつけて「はい、おしまい」としてしまう人はなかなか伸びません。「どこで間違えたんだろう」「どうすればもっとできるようになるか」と考えられる人はどんどん伸びます。

後者の状態になるための第一歩がこの項に書いてあることです。

4.1.1 丸付けができる

これが自学の第一歩です。丸つけを自分でできなければ自学はできません。小学生のうちに身につけておきたいスキルです。身につけるのは難しくないです。ただやらせればOK。ただし、最初のうちはちゃんとできてるかチェックした方がいいですね。

4.1.2 丸つけ+直しができる

これもできるだけ早く身につけておきたいスキルです。直しができると、色々と疑問が出てくるので質問ができるようになります。そうなればかなり効果的な自学ができるようになり、指導効果もグッと高まります。

この「直し」のスキルは生徒ごとにかなり異なります。どこまで考察しているかをよく観察しましょう。観察する方法としては、発問が有効です。

間違えたけど自己解決できたと申告してきた部分について、あれこれ質問してみると本当に解決されているかがわかります。実は、自分では解決したと思ってるけど的外れな考えだったということはよくあることです。それを放置し続け、大量に溜まると後から取り返すのは難しくなります。

4.1.3 ◯、×、△をつけられる

復習した問題について、「OKなら◯」「解法を間違えたなら×」「解法は合ってたけど計算ミスしたなら△」のように印をつけるようにしましょう。

これは復習しやすくするため、その効果を高めるために行うものですが、少し注意が必要です。

1つは、そもそも生徒の判断が正しくない場合があることです。自分ではOKと思ってたところが実はOKじゃなかったみたいなことがよくあるんですよね。これによる知識やスキルの抜けは後述の演習方法や復習方法ができればある程度は回避できます。

2つ目は、生徒がプライドが高い場合です。1つ目の判断を誤ったためにズレるのとは違い、プライドが高い人は理解してないものを意図的にOKとしてしまう傾向があります。この性格の持ち主は結構やっかいです。それを指摘すると、言い訳をするか、やる気をなくすか、なんにせよモチベーションによくないリアクションをとります。

これを改善するのは容易ではないですが不可能ではないです。詳細は5章や6章第4項、8章、そして10章を読んでもらいたいと思います。

4.2 適切なやり方で演習ができる

自学レベルを上げる第一歩は演習のレベルを上げることです。丸つけ、直し、◯×△をつけるにはまず問題を解かなければいけません。

演習は初習、2回目以降(復習)でそれぞれやり方を変えましょう。

4.2.1 初習のときの演習のやり方

初習のときの演習のやり方は次の通り。

①解説を読む。読みながら解いてもOK。
②類題を解いてみる。このとき解説を読みながらでもOK。
③今度は何も見ずに類題を解いてみる。

初習の演習はあくまでも「理解する」ために行う。つまりインプット。解けるかどうか、つまりアウトプット、の確認は復習で行う。

◯や△などの印はこの時点ではつけない。復習時につけるようにしよう。時間を空けて解けるかどうかが重要。

4.2.2 復習のやり方

復習についてはまず以下のルールに従ってやるといいと思います。

①最初の復習は必ず全ての問題を解く
②解いたら、毎回「◯」「×」「△」をつける
③2回目以降の復習は×だけやる
④たまに×以外の問題もやる
⑤タイミングが重要

①について

勉強していて最大の敵は「理解した気になる」と「解けるようになった気になる」ことです。それを防ぐには実際に解いてみるしかありません。初習のときにこの状態になってしまうと以降の勉強が総崩れになるので、最初が肝心です。しっかり解き直しましょう。タイミングは⑤を参照してください。

②について

ここで初めて印をつけます。ここからは、毎回つけていきましょう。私は◯もつけたほうがいいと思います。なぜかと言うと、何も印をつけてないと後になってこの問題はOKなのか、それ以前にどのくらいやったのかどうかがわからなくなるからです。できれば日付も書いておくといいでしょう。前回の復習からあまりにも時間が経っている問題の中には復習しなければいけない問題もあるはずです。

③について

2回目以降は基本的に×を優先して復習しましょう。全ての問題を復習するのは時間の無駄です。このときもしっかり「◯」「×」「△」をつけましょう。

④について

一度◯がついたからと言って、それ以降も解けるとは限りません。ここに書いてあるルールに従えば、最初の復習は初習から1週間以内にやるので比較的記憶が新しい状態で解きます。その時は解けたとしても1ヶ月、3ヶ月後ならどうでしょうか?復習は適切なタイミングとやる問題の選定が重要です。

⑤については次の項で詳しく紹介します。

4.2.3 復習のタイミング

基本的な復習のタイミングは以下のようになります。

①その日のうち
②翌日
③6日後
④単元終了直後
⑤模試の直前
⑥複数単元が終了直後

①について

その日のうちに、というとさすがに早すぎないかと思うかもしれませんが、人間は以外とバカなのですぐに忘れます。特に、集中して勉強できてない時は理解できているようでできてないことが多いです。問題を解かなくてもいいので、寝る前などにその日に勉強した内容を振り返るだけでかなり効果があります。

②について

翌日は、普通の人にとって復習タイミングとして最適です。特に受験勉強スタートした直後などは、まだまだ受験勉強に集中できていないので、すぐに忘れます。勉強したことを四六時中頭の中のプラオリティが高い場所に留めておくために、翌日に前日の内容の復習をするのがいいです。この場合は①と違い、しっかり手を動かして解く必要があります。全ての問題をやるのは難しいので、「ぱっと見でこれは忘れてそうと思うもの」だけでいいのでやっておきましょう。

③について

指導を1週間単位とした場合、次の指導の前日に復習するのが基本です。特に前日である必要はありませんが、一番わかりやすいタイミングだと思います。

①と②については個人差があります。学力的に①と②をやらなくても問題ない人もいるでしょうし、しっかりやったほうがいい人もいるはずです。そのあたりは調整しつつ指導を進めましょう。

④について

1つの単元が終わったら、その単元を一通り復習しましょう。このときはすでに印がついているはずです。基本的には×のところは解き直すとして、そのほかの部分にも必ず目を通して少しでも怪しいところがあれば解いてみましょう。

⑤について

模試のための勉強なんかしないほうがいいという意見もあると思いますが、わたしはやったほうがいいと思います。理由は、良い復習のタイミングになるからです。受験生の多くは模試となるとプレッシャーとストレスを感じます。そういうときの勉強はいつも以上に集中できます。また、飽きない工夫としても利用できます。普段は、日々勉強したことを復習するという単調な作業になりがちなので、模試の前は自分の好きなところを重点的に復習するタイミングにもってこいです。

⑥について

例えば、単元1、2、3と終わり、単元3の総復習も終わったとしましょう。このあとは、単元1の復習をやると良いかもしれません。時間が経つと忘れているので、自分では解けると思っていても以外と忘れているものです。これも人によってどのタイミングでどこを復習するかは調整しましょう。5つの単元が終わるごとに、弱点部分をやるようにしてもいいでしょう。

このように、基本的にはこれでもかというくらいに復習したほうがいいです。ただし、復習するときにはいくつか注意点があります。次の項目ではその注意点について見ていきましょう。

4.2.4 復習するときの注意点

基本的に人間はバカなのでたくさん復習したほうがいいんですが、ただ何も考えずに復習しても効果が薄いです。次の点に注意して復習するようにしましょう。

①飽きたらやらない
②できるだけ同じ問題をやらない
③頭の中で解法を再生できるか
④再生できなかった問題は必ず手を動かして解く

どれも人間の性質を理解した上で、そのデメリットを回避する方法です。これをやっているかどうかで学習効率は大きく変わります。

①について

人間は飽きると学習するのをやめます。クソつまらない授業の内容が頭に入ってこないのはそのためです。つまらない人の話を全然覚えてないのと同じです。復習は必要なことですが、やっていてつまらなさを感じる場合、時間をかけただけの効果が得られない可能性が高いので、いっそのこと他のことをやったほうがいいです。

②について

これには「飽き」を回避するという理由もありますが、他の理由もあります。全く同じ問題を解くと「覚えていて解けた」のか「理解して解けた」のかがわかりにくくなります。受験生の多くは前者を後者と勘違いしがちです(自己評価を甘くするのは誰でもあることです)。本番に弱い原因の1つはこれです。それを避けるには、同じ知識を使う他の問題(初見が良い)を解くのがベストです。だけど、これはけっこう難しいですよね。複数テキストを使うのは骨が折れます。そこで③を使います。

③について

復習時の評価について、重要なのは「理解して解けたかどうか」です。目標レベルや解く問題にもよりますが、基本的にはこう思っておいて間違いないです。手を動かして解くと時間がかかります。そこで、復習の時はまず「解法を頭の中で再生」してみましょう。全ての解法ステップをスラスラと再生できたらその問題はいちいち手を動かして解く必要はないかもしれません。ただし、これも生徒の性格や学力によって良し悪しが分かれます。自己評価が高い人やプライドが高い人はこのやり方をすると「実は再生できてないのにOKとしてしまう」ことがあります。また学力が低いと、実際はOKとして良い水準に達してないのに「このくらいならいいかな」としてまいます。ただ学力は低いだけなら、失敗を繰り返してレベルを上げていく方法もあります。

④について

これはそのままです。再生できなかった問題の多くは手を動かしても解けない可能性が高いですが、手を動かすことで思い出すこともあるので、まずは手を動かして解きましょう。再生できた問題についても「100%これであってる!」という自信があるもの以外は手を動かして解いたほうがいいでしょう。

こんな感じで、勉強する上で最も注意すべきは「飽きないように工夫すること」と「本当に解けるのか」をチェックすることです。

必要なテキストの全ての問題を「解法を脳内再生できる」レベルまで上げればほぼ合格できます。