大学入試新制度/新共通テスト/民間英語試験

新共通テスト、民間英語試験の問題点まとめ

2020年から始まる大学入試、新共通テスト、民間英語試験の問題点をまとめました。2020年の入試まで18ヶ月を切った今でも以前から言われている問題点が解決されてないようですが文科省は果たしてどうするつもりでしょうか。

参考:大学入学者選抜改革について

*追記
2019年11月1日のニュースで、英語民間試験の実施延期が決まったと報道がありました。文科大臣によると2024年(令和6年)の実施に向けて改めて検討するようです。いやー良かったですね。あとは共通テストの記述問題がなくなればさらに良いんですけどね。参考:NHK WEB NEWS、萩生田文科相 英語試験 抜本的に見直し 5年後実施に向け検討

新共通テストで指摘されている主な問題点

新共通テストの問題点は主に以下の点に集約されます。

  1. 記述式問題は採点基準を統一できないのでは?
  2. 思考力を判定できないのでは?
  3. 一般選抜を誰でも受験できなくなるのでは?

新共通テストでは国語総合(近代以降の文章)と数学1・1A(数1の範囲)で記述式の問題が出題される予定です。記述式問題はただでさえ採点が難しいんですが、それを50万人もの受験生の回答を公平公正に採点できるのか疑問視されています。

この問題は新共通テストの問題例が最初に例示された直後から指摘されてきました。後になって問題の回答様式に条件をつけて回答をある程度の範囲内に意図的におさめるような、改定がなされましたが、これで果たして思考力を判定できるのかという問題が新たに生まれてしまいました。

しかも人手不足でバイトの大学生に採点させるのではと言う話も出てるほど。これがもし実行されたら採点ミス続出するのは間違いないですね。

3つ目は英語民間試験の活用とも関係あることですが、文科省のガイドラインでは英語民間試験を出願要件や新共通テストに加点する形で活用するようにという文言が書かれています。従来の入試制度では、出願するのに成績は関係ありませんでしたが、新制度では出願するのに一定の英語力が必要になってしまいます。

これに対して例えば東大は2018年7月に公表した「入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申の公表について」の中で「英語以外で卓越した能力があるが、英語だけ苦手な生徒は出願すらできなくなるのではないか」と語っています。

成績に関係なく誰でも受験できるのが大学入試制度において最も重要な点の1つなんですけどね。それを崩壊させるような制度はやめたほうが良いですね。

新共通テストについての詳細は以下の記事をどうぞ。

これさえ読めばわかる!新共通テストの重要ポイント、アイキャッチ
これさえ読めばわかる!新大学入試制度の重要ポイント2020年から始まる新大学入試制度のポイントをまとめました。大きく変更されるのは英語と数学。特に英語は民間試験の利用が広がるので注意が必...

英語民間試験で指摘されている主な問題点

英語民間試験に関しての主な問題点は以下の通りです。

  1. そもそも英語民間試験いらないのでは?
  2. CEFR換算意味あんの?
  3. 高大接続ちゃんとできてんの?
  4. 採点基準、統一できんの?
  5. 地方の人不利なんじゃね?
  6. 金持ち有利じゃね?
  7. 推薦入試に間に合わないのでは?
  8. すでに英検2級持ってるのに受け直さないといけない?

そもそも英語民間試験いらないのでは?

と疑問に思う人もいると思いますが、それについては教育改革の経緯を踏まえた上で議論しないといけません。

まず、教育改革の中で「英語超重要だからスピーキングに力いれてこーぜ」という話になりました。これについては多くの方が概ね賛成だと思います。じゃないと国際競争力はどんどん低下しますからね。

従来のセンター試験でスピーキングも行うのがベストですが、「でもさ、50万人もの受験生のスピーキングを一斉にやるの無理じゃね?」「大学ごとにやるのもコストかかるし技術的にも無理ゲーだわw」となったわけです。

「じゃあ、民間試験でやれば良いじゃん」

と、こういう経緯があります。

ちなみに、韓国は日本に先駆けて英語教育改革を行ってきましたが、その韓国も当初は日本のセンター試験のような共通テストでスピーキングをやろうとしましたが、採点ミスやシステムの不具合が多発して失敗・中止したらしいです。

ということで、「英語レベル上げないとヤバい!」→「スピーキングやろ!」→「でもセンターとか大学が運営するのは無理!」→「じゃあ民間しかないな!」って感じですね。

英語教育改革としてスピーキング能力の向上は必須で、現状ベターなのが民間試験だって判断ですね。

CEFR換算意味あんの?

これも当初から疑問視されている点です。

そもそもCEFRって何かというと「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)」の略です。

以下の画像は、文科省が公表している大学入試新制度で活用する各資格・検定試験とCEFRとの対照表です。

文科省CEFRのコピー

例えば、英検、GTEC、TEAPなんかはほぼ日本国内でしか使われてない試験なんですが、それをヨーロッパで幅広く活用されているCEFRの基準に換算して良いのか?そもそも換算できるのか?ということですね。

ただし、「英検なんて海外じゃ全く意味ないじゃん」という議論と「英検をCEFRに正しく換算できるのか」という議論は分けてしなければいけません。

英検取っても海外では通用しないので前者については議論の余地はないです。もし、グローバルな人材を育成するための教育を本当にしたいのであれば、大学入試で活用する民間試験から英検、TEAP、GTEC、TOEICは排除すべきだと私は思います。それらの試験がCEFR基準を満たすと認定されるまで待つよりはそもそも国際信頼性があるIELTS、TOEFLあたりだけに絞ったほうが効果的です。

じゃあなぜ意味のない英検などを採用してるのかって話ですが、まぁ利権でしょうな。知らんけど。

英語民間試験については以下の記事にまとめてあるので合わせてご覧ください。

文科省CEFRのコピー
新大学入試で利用される英語民間試験まとめ(随時更新)2020年(令和2年)からスタートする大学入試で利用される英語民間試験の情報をまとめました。各試験の料金、試験内容・方式、スコアなど受験...

高大接続ちゃんとできてんの?

これは「高校での教育と大学入試の問題がちゃんと噛み合ってんのか」ってことです。

例えば、「英語民間試験で使われる英単語の中で高校で習わない単語あるんちゃうの?」っていう疑問ですね。これは間違いなくあると思います。例えばTOEICなんかは日常のシーンだけではなくビジネスシーンからの出題もあります。

こういった高大接続できてなさそうな部分は各試験に多分に含まれ、かつ各試験間でも大いにズレがあると思われます。

これで果たして受験生を公平・公正に評価できるんですか?って話ですね。

まぁ、それを言い出すと私立難関校とか医学部とかは明らかに指導要領の範囲を超えた単語をバンバン使った英文を出題してたりしますけど(基本的には注釈ついてますが)。

採点基準統一できんの?

これもCEFR換算うんぬんと同じですが、各民間試験はそれぞれ試験内容・実施方法が異なるので採点基準が統一されてないという問題があります。

特にスピーキングはその問題点が顕著にあらわれます。

注意して欲しいのはスピーキングテストが対人で行われるのかパソコン・タブレットで行われるのかの違いです。

例えば英検やIELTSは対人ですが、GTECなんかはタブレットです。私は仕事柄生徒からGTECのクソさ加減についてよく耳にするんですが、果たしてこれらのスピーキングテストの点数を相互に換算して良いのかどうか。

対人だから良いってわけでもないと思います。面接官も人間なんで男性だったら可愛い子がきたら採点甘くなっちゃいそうですからね。その点、パソコンとかタブレットなら公平・公正ぽいですが、実はタブレットやパソコンに向かって話した英語は結局は人間が採点してたりします。

いずれにせよ、これらの試験を全て同じ基準で受験生の評価に使うのはやめたほうがいいですね。

地方の人不利なんじゃね?

住んでいる場所によっては交通費や宿泊費がたくさんかかってしまう人がいるのは不公平ですね。ただ、これは従来のセンター試験でも同じですし、どんな試験をやっても同じ問題は発生しそうです。

例えば、「全ての受験生が往復3,000円以内、1時間以内に試験会場にアクセスできる試験」みたいなのが理想ですが、これはコンビニで受験できるようにしても無理です。田舎は最寄りのコンビニまで2時間かかりますからね(偏見)。

冗談はさておき、実現するにはかなりのコストがかかりそうです。そうなると、そう、みんな大好き税金ですね。この問題をクリアするにはまた税金を上げなきゃいけなそうなんですが、みんな税金上がるの嫌でしょ?

この点に関してはどうしても避けられない不公平さが残りそうです。その点はみんな理解してるとは思いますが、じゃあなんでそんな騒ぐかというと、試験会場はどこなのか、どのくらいの時間でアクセスできるのか、など具体的な情報が文科省から示されてないことですね(離島は住んでいる島で受験できるようにする、などが公表されてる点は評価できますね)。

「あなたのところは試験会場はだいたいこの辺になりますよ」という情報が示されるだけでもだいぶ安心すると思うので文科省はなるはやで決定して欲しいところです。

金持ち有利じゃね?

これは間違いなくそうです。従来のシステムでも金かけた人が成績良いというのは周知の事実ですが、英語民間試験ではそれとは別の問題が発生します。

それは受験機会の多寡です。

例えば、金持ちは民間試験を何回も受けて練習することが可能です。これは明らかに不公平。BSフジの番組内で萩生田文科大臣が「それを言うなら予備校通うのも不公平」といった趣旨の発言してますが、これはお門違いですね。

予備校は勝手に企業がやってるビジネスなので、資本主義をベースにするのであれば金持ちが課金できるのは当たり前で別に不公平ではないです。資本主義が不公平と言いたい場合はまた別の議論ですが。

一方で国が運営する大学入試で、受験回数に差が出るのを許容するシステムを採用するのは問題があります。例えば従来のセンター試験は1発受験で金持ちだろうが貧乏人だろうが公平に評価されてましたからね。貧乏人に過度の負担を強いるシステムは良くないでしょう。

推薦入試に間に合わないのでは?

AO、指定校推薦、公募推薦などの入試は10月前後に行われることが多いんですが、英語民間試験を入試に利用する場合、入試までの1年間のうちで2回分の試験結果を使うことができます。

2020年のAO、指定校推薦、公募推薦まですでに1年を切っているところもあるわけですが、その出願資格として英語民間試験を利用するのかしないのか、文科省の判断が具体的にできてないわけです。文科省が「こうすると」と公表してくれない限り対応しようがないと言う大学も多いはず。

例えば英検は試験回数が年3回が基本ですが、多くの場合出願までに受験できるのはそのうち2回です。つまり、2020年の推薦入試で英検を利用する場合はすでに受験申し込みをしてないと間に合わない可能性がある、ということです。

このへんはホントに不透明なので私もよくわかりません。そもそも2020年の推薦入試に関しては新制度の適用範囲外なのかもしれません。詳しく知ってる方いたらご連絡を。

ちなみに東大は一般選抜に関しては英語民間試験の対応を公表してますが、推薦入試に関しては特に何も言ってません。詳しくは以下の記事をどうぞ。

新共通テスト、英語民間試験に対する東大の対応、アイキャッチ
新共通テスト、英語民間試験に対する東大の対応(随時更新)共通テストの記述式問題、英語民間試験の利用についての東大の対応について2019年10月時点で公表されている情報をまとめました。受験生はぜ...

再受験しないといけない?

新制度において、英語民間試験を活用する際のルールは受験までの1年間で受験した成績を使うことになっています。とすると例えばですが高1の時にすでに英検2級合格した人が、高3になってもう一度受験し直さないといけないのでは、という疑問があがっています。

以下、文科省の公表している資料から引用します。

 

1 高校2年時に大学入試英語成績提供システム参加試験(以下「参加試験」という。) を受検し、文部科学省が公表しているCEFR対照表のB2以上に該当する結果を有する者で、次の①または②のいずれかの負担を軽減すべき理由があり、かつ、高校の学びに支障がないと学校長が認めた者は、高校3年の4月から 12 月の2回に代えて、その結果を活用することができる。

<負担を軽減すべき理由>
①非課税世帯であるなど経済的に困難な事情を証明できること
②離島・へき地に居住または通学していること

出典:大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について

 

これを読む限り、単に高2の時点で英検2級取得した生徒は高3でもう一度受験しないといけないみたいですね。なかなかのゴミルールですね。

 

文科省としては「高1高2もOKにしちゃうと、大学受験が実質高1から始まっちゃって部活など受験勉強以外の学校生活に支障が出るから」というのが建前っぽいです。

参考:民間の英語4技能試験の結果の提供について

それを言い始めたら、今でもそうなんですよね。進学校と言われるところは入学直後から受験勉強が始まってるし、中高一貫校は中学生の時から始まってますからね。

解決策

ということで、新共通テストと英語民間試験の問題点を見てきましたが、最後に私が考えた解決策を書いておきます。割とシンプルなのですぐ実行できそうです。

  1. 英検、GTEC、TEAP、TOEICは排除する
  2. 各大学は自校の学生像に最も適する試験だけ採用する
  3. 英語民間試験は出願資格としては利用しない
  4. 一般選抜での試験科目から英語をなくす
  5. 英検、GTECなど排除して浮いたコストで試験会場増やす
  6. 英語民間試験受験のための支援金の配布
  7. 2020年の推薦入試では民間試験は使わないようにする

前述の通り、国際的な競争力を上げるための教育改革なのに国際的な信頼性に欠ける試験を使う意味がわからないので、それらを排除します。

さらに各大学は利用する試験を絞ります。極端な例ですが「グローバルリーダー育てたい!」みたいな大学はIELTSだけ使うとかすれば良いのでは。

公平性の点からも英語民間試験を出願資格として使わないようにします。

また、一般選抜での試験科目から英語を無くします。一般的な英語力の有無はIELTSなどで十分評価できるはずで、わざわざ大学ごとにやる意味がないからです。例えば、IELTSで5.0持ってる生徒は大学で英語を使って勉強するにあたってなんら支障はないはずです。大学色に染めるのは入学後の教育で良いでしょう。

英検、GTECを排除して浮いたコストで試験会場を増やせば田舎の人でも受験会場にアクセスしやすくなるはずです。

英語民間試験を受験する費用が一定額を超える人には支援金を配布することで、経済格差は縮小できるはず。額はどうするのかなど細かい点はよく考えないといけないですが。

推薦入試の英語民間試験に関しては「2020年の推薦入試については英語民間試験を使わないようにする」と文科省が一声言えば済む話ですね。というかもう間に合わないのでそう言うしかないかも。各大学も「文科省が判断遅いので、うちは2020年の推薦入試では英語民間試験を使いません」と言えば良いと思います。大人の事情でそう言えないのかもしれないですが、私だったら大人の事情に受験生を巻き込まない大学で勉強したいですね。

 

ということで、一通りまとめてみました。まとめたことで私自身も情報が整理されたのでよかったです。これで生徒や保護者からの相談にも応えられます。

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