シリーズ第8回 プロ講師が実践する個別指導の指導方法 大学受験生編 「5章 イライラしない」

5章 イライラしない

講師がイライラすると生徒にもそのイライラは伝わります。生徒の性格にもよってそれをどう感じるかは異なりますが、基本的にいいことは一つもありません。なので、なるべくイライラしないようにしましょう。

イライラしないのは無理だという人が多いと思いますが、イライラしないで指導することが講師レベルをグンと上げるためには必須だということを理解しなければいけません。

この章ではイライラに対処する方法を書きました。まずはイライラの原因を明確にしておきましょう。

5.1 イライラの原因は2種類

イライラの原因は主に次の2つに分けられます。

①生徒の学力が低い
②生徒のやる気がない

①について

自分(講師)としては前回しっかり教えたと思っていた内容をチェックしたら全然できてない場合などがこれです。「これくらいできろよ!」と心の中で思うと思いますが、それを表に出すのはNGです。

こういう場合、本当にダメなのは生徒ではなくそれを教えた自分(講師)です。ほとんどの場合、「生徒の学力に見合わないレベルの問題を扱ってしまった」か「教え方が下手くそ」かのどちらかです。

それを理解していれば生徒を責めるなんて愚かなことはしないでしょう。

②について

宿題を出したけど全くやってこない場合などがこれです。「ちゃんとやれよ!」と思うだけならいいんですが、これに対する講師のNG行動がもう一つあります。

それは、テスト結果がとくなかった時などに「宿題をやらなかったから」という言い訳、責任転嫁をすることです。

これは生徒との関係を悪化させる最悪の行動なので注意しましょう。

生徒のやる気のなさに苛立つ人はそもそも大前提を理解してません。自分自身の立場に置き換えて考えてください。

例えば、まったく興味のないスポーツを強制的にやらされたらどう思うでしょうか。しかも、毎回のように「次回までにこのトレーニングやっといて」と言われます。そしてやってこないとコーチが「なんでやってこないんだ!」と怒ります。

まぁ、そんなスポーツやる気になるわけないでしょう。

生徒も同じ気持ちです。しかもそれを我慢してずっとやり続けているという地獄のような状況にいるわけです。

ですから、やる気がなくてやらないのは当たり前だと思っておかないといけません。これを理解していればイライラしなくて済みます。

やる気のない生徒に対してイライラするもう一つの原因は「講師が想定している生徒のやる気」と「実際の生徒のやる気」に大きなギャップがあるからです。

「これくらいやって当たり前だろ」と思っているからやらない生徒に対して苛立ってしまいます。

これも、上記のようなやる気がないというのはどういう状態かを理解していれば回避できます。

大学受験生は比較的やる気がある生徒が多いのでそこまでイライラすることもないと思います。ところが、より複雑な問題にぶち当たることがよくあります。それは「やる気はあるのに、行動できない」生徒です。これについてはメンタルやモチベーションの項目で書きました。

5.2 ハードルを下げる

4.1で書いたようにイライラの主な原因は講師が頭の中で設定しているハードルが高すぎることが原因です。自分の(受験勉強の)経験だけでハードルを設定してしまうとこうなりがちです。

だから、ハードルを下げましょう。

例えば、先の例のように教えたけど解けなかった場合、講師が想定しているよりも生徒の学力が低いはずです。「教えたけど解けなかった」というのは、見方を変えれば「まだそのレベルの学力はないな」という貴重な情報になります。であれば、「解説のスピードを下げる」「指導時間内の類題演習を増やす」など学力に見合った指導をすればいいだけです(別途、「学力が低い人への指導方法」を参照されたし)。

やる気のない生徒に対しても同じことです。例えば「宿題をやる」というのは実はかなりやる気のある人の行動です。なぜなら、宿題をやるというのは裏を返せば「宿題じゃなければやらない」ということだからです。

宿題をやってくる理由を聞いて「自分のためだから」と本気で答える人はほとんどいないでしょう。多くの人はやらされているだけです。

そんな宿題はただやる気を下げ、自主性を損なわせているだけなのでやめたほうがいいです。

ここまで理解できれば、宿題をやってこない生徒に対して「じゃあ今日から宿題はなしで」と言い切ることができるようになります。

その代わりに指導時間内で何ができるかを考えましょう。優先順位、その生徒が身につけるべきはなんなのかを考えて指導しましょう。

不思議なことに、それを続けていると生徒は自然と自分から勉強するようになります。そうなるまでの時間は生徒によってかなりの差がありますが、受験生であれば大抵は2~3ヶ月もあれば勝手にやるようになります。

5.3 イライラしないことは信頼関係構築の第2歩目

学力の低い人ややる気のない人は周りの人、特に講師や教師、親をイライラさせます。そして、彼らは人が自分に対してイライラしていることに慣れています。

イライラする人は自分のことを責めてくるので彼らにとって嫌な存在です。嫌いな人の話は聞かないので、自然と人間関係は悪くなります。

ですので、イライラしないことは生徒との信頼関係を作るために必要なことなんですね。

第2歩目としたのはイライラしないということが難しいからです。その難しさは講師自身の性格にもよります。感情的になりやすい人は難しいかもしれません。

第1歩目は特定の何かというわけではなく、このシリーズに書いてあるようなことを実践していくことで信頼関係は出来上がっていくと思います。