シリーズ第4回 プロ講師が実践する個別指導の指導方法 大学受験生編 「2章 初回指導 その3」

2.4 計画の立て方

初回の指導で、ここまで「志望校のチェック」「現在の学力のチェック」「ポテンシャルのチェック」をやってきました。次は計画立案です。

計画の立て方と言っておきながらなんですが、計画なんてほとんど意味がないので適当でいいです。

多くの受験生や講師は計画を立てたがりますが、最初に立てた計画は1週間で崩れます。理由は「見積もりが甘いから」です。

現役受験生にとっては大学受験は未経験のことです。未経験のことについて計画を立てるのは難しいですし、仮に完璧な計画を作れたとしてもそれを実行するのはもっと難しいです。

浪人生にとっては何回目かの経験ですが、基本的に失敗してきたからこそ浪人しているわけです。そういう人が計画を立ててもうまくいくわけがありません。それに気づかなかったから失敗したとも言えますが、ジレンマですね。

2.4.1 計画よりも行動、でも少しは計画も必要

とは言え、何も計画しないで突っ込むのはもっとバカなのである程度の計画は必要です。受験勉強の計画を立てるときは次の順序でやりましょう。

①志望校をチェック
②志望校の受験科目を確認
③科目ごとに使うテキストをリストアップ
④科目ごとにどのテキストをいつまでにどのレベルで終わらせるかを設定する
⑤勉強スタートし適宜修正

すでに書きましたが、受験生は③で止まってしまいます。③が一番難しい。

まず受験生は「自分はまだ、受験生としてレベル1だから、まずは良さげなテキスト1冊をやってみよう。そうすれば、受験勉強の全体像が見えてくるはず。そうなれば、何が必要かもわかるはず。」と考えてさっさと手を動かしましょう。

講師は生徒が最初にやるべきテキストとして何が良いかを選定する必要があります。そこから生徒に考えさせるというのもありですが、それは少々ハードだし、タイムリミットがある中でそれをやるのはリスクが大きいのでオススメしません。

ということで、講師は、

  • 志望校
  • 現在の学力
  • ポテンシャル
  • 残り時間

を総合的に評価してどのテキストを使うべきかをリストアップできなければいけません。

③のときに講師は使うテキストの全てを明示してもいいですし、最初の一冊だけ伝える方法もあります。私はどちらかというと後者をよくやります。理由は、すでに書いた通り「何をどのくらいやればいいか」は個人差があるからです。

現在の学力はある程度正確に測れるにしてもポテンシャルに関しては最初の段階では測りきれませんし、ポテンシャルをどのくらい引き出せるかは講師の腕にかかっています。

最初のテキストの出来具合で次の手を考えるのが最も効率が良くリスクが少ない方法です。

ここで最も重要なのは計画を立てることではなく、受験勉強の全体像をいち早くつかむことです。やり始めると、

「ここはいけるな」
「ここムズすぎ」
「あれもやらなきゃ」
「自分てこんなにできなかったのか」
「志望校の問題まったく解けない・・・」
「センター7割から上がんねぇ」
「この単語帳、使いづらい」
「全然計画通りにいかないじゃん」

ということがわかってきます。これらを実感してからの方が勉強に集中できます。そして、そのためにはまず勉強してみないといけません。

これらの感覚は勉強をすればするほどわかってきます。そしてどこかのタイミングで「これはイケる!」という自信に変わるときがやってきます。その時まではひたすらPDCA(plan-do-check-act)サイクルを回しまくることが重要です。

例えば最初の1週間の勉強を終えると、「もっとこうすべきだな」というアイデアを得ることができます。そしてそのアイデアに従って勉強方法を修正しまた次の1週間勉強することになります。

2〜3週間もすれば最初の計画が無意味だったことに気がつくでしょう。だから最初から細かい計画を立てるのは無駄なんです。いち早く「これならイケる!」という状態になることを目指し、行動しましょう。

2.4.2 次回までにやることを決める

「③使うテキストをリストアップする」まで終わったら次は次回までにやることを計算させてみましょう。計算をするにあたって講師は、

「青チャ1A,2B,3を12月までに9割マスターするとして、次回(例えば1週間後)までに何をしたらいいか計算してみて」

と言ってみましょう。このとき伝える計画は仮のものですが、ある程度目標に合わせたものである方がいいです。

計算してみた結果次のようになったとします。

次回(例えば1週間後)までに「青チャの2章の例題と練習までを終わらせる」

現役の受験生にとっては初めての受験勉強です。数カ月に渡る長期戦になります。受験生も計画を立てるんですが、最初から無茶な計画を立てる人が続出します。今までやったことないようなことをいきなり計画に組み込もうとする。そして、ほとんどの人は失敗します。

でもそれでいいんですよ。重要なのはそれを適宜修正しながら勉強していくことです。

計画を立てる上でもう1つ重要なことがあります。それは、「最低限いつまでに何をやらなければならないかを知ること」です。それぞれの科目で最低限このくらいのペースでやらないと間に合わない、というある程度のペースが存在します。それを現時点の学力、ポテンシャル、残り時間、を加味し総合的に判断し最終的なペースを決定しましょう。

これは受験生一人でやるのはけっこう難しいです。未経験のことですからね。そこで講師の出番になるんですが、ここも最初から教えないようにするほうがいいと私は考えています。やはり自分で考えさせることが重要ですからね。

ヒントは出してもいいと思います。例えば、マラソンに例えて「フルマラソン42.195kmをタイムリミットの7時間以内に走るにはどのくらいのペースで走ればいい?」と聞いてみるといいでしょう。計算すれば10kmを100分ということは1kmを10分であることはすぐにわかります。

この「1km10分か!」とわかるだけでもかなりモチベーションが上がります。やることが明確になるので、あとはそれをクリアするためにどうしたらいいか考えればいいわけです。

「じゃあ今ならどのくらいのペースで走れるかな?」と考えるだろうし、「そもそも42.195km走れるか?」「後半はペースが落ちるから前半はもうすこし早く走らないといけないな」とか考えるでしょう。

受験勉強では、フルマラソンでいう42.195kmにあたるものが明確でないところがポイントです。何をどのくらいやればいいのかわからないからみんな不安になるんですね。

講師であればざっくりとそれを把握しているのが大前提ですが、何をどのくらいやれば〇〇大学〇〇学部に合格するかは個人差があります。青チャと過去問だけで早慶に合格する人もいれば、何冊もやったのにMARCHに合格できない人もいます。

講師は「この青チャを9月終わりまでに1周すればOKだな」くらいのスケジュールは立てられるようにした方がいいです。そして、それ以上に重要なのは、その生徒が本当にそれで志望校に合格できるかを適宜評価し、軌道修正することです。

2.4.3 カリキュラムを捨てよ!

さあ初回の指導から1週間経ちました。1週間前に決めたやることを生徒はどのくらいできているでしょうか?

半分もできない?それともほぼ完璧に終わらせている?

その結果によって講師の次の一手は変わってきます。生受験生が受験勉強の計画を立てることが無意味なように、講師がカリキュラムを作るのもまた無意味であることがここでわかります。

講師の予想は大きくはずれることになるでしょう。経験の浅い講師の場合、生徒の力を過大評価しがちです。これくらいはできるだろうと。

そのズレを常に修正しながら指導を進めなければいけません。間違っても講師自身の勉強経験をもとにしたカリキュラムを作成し、それを実行しようと思ってはいけません。

カリキュラムを捨てよ!