シリーズ第3回 プロ講師が実践する個別指導の指導方法 大学受験生編 ver.2017 「2章 初回指導 その2」

2.3 ポテンシャルをチェック

次に重要なのはポテンシャルのチェックです。ポテンシャルは言ってみれば伸び代です。指導開始時点での学力は同じでも、最終的な結果は生徒によって異なります。このポテンシャルの評価をミスると指導が失敗する可能性が高くなります。

ただし、ポテンシャルを正確に把握することは難しいですし、講師が勝手に決めつけるべきではないということは強調しておきましょう。生徒は講師が驚くほどの成長をすることもありますし、そうなるように指導するのが講師の最大の仕事ですからね。

ポテンシャルのチェックは「この生徒はどのくらいまでいけるか」を測るために行うのではなく、「この生徒にはどういう指導がいいんだろうか」というのを考えるために行うものです。ここが個別指導の最大の特徴です。

ポテンシャルをチェックするといっても初回でやることはほとんど1.2と同時にできます。

 

2.3.1 ポテンシャルをチェックするための7つの指標

私はポテンシャルを評価するときに生徒の以下のことを観察するようにしています。

①性格は明るいか
②フットワークが軽いか
③ノリがいいか
④メンヘラじゃないか
⑤問題を解く様子はどうか
⑥ハードワークできるか
⑦説明がうまいか

 

このうち、④以外は初回である程度判断できます。④は指導が進むにしたがってその正体を表していくので、最初は気づかないこともあります。

①〜④は性格に関する情報です。これらが全てYESの場合、ポテンシャルが高いと言えます。なんとなくわかるとは思いますが、その理由を説明しましょう。

 

①性格は明るいか

性格が明るい人は多少の困難にぶつかっても止まることなく前に進むことができます。ポジティブと言い換えてもいいです。模試の結果が悪くても、前向きに捉え「ここが悪いから、改善しよう!」と次の行動に移すことができます。逆に、性格が暗い人は「ああ、ダメだった」と落ち込んでしまい、改善のための行動ができません。性格を判断できるように初回の指導でしっかりコミュニケーションをとりましょう。

 

②フットワークが軽いか

フットワークが軽い人は「とりあえずやってみよう!」と思ってすぐに行動に移せます。講師のアドバイスをすぐに実行できるのはもちろん、自分自身でも「こうしようああしよう」と考えて行動できます。フットワークが重い人はそれができないので成長スピードが遅いです。後述の「ハードワーク」でフットワークの軽さはある程度測れます。

 

③ノリがいいか

語弊を恐れずに言うとノリがいい人は「おだてられやすい」です。お調子者と言ってもいいかもしれません。ノリがいい人は「いいね!」と言ってすぐに行動に移すことができます。新しい勉強方法や改善方法をすぐに試したりできるので成長スピードが早いです。これも「ハードワーク」である程度測れます。

 

④メンヘラじゃないか

基本的にメンヘラはダメです。何をしてもネガティヴに考えるし、どんなアドバイスに対しても「やらない言い訳」を探します。何をするにしても「どうせ自分は」というところから入ります。メンヘラの人は行動に移すのも遅いですが、移したしてもそういうネガティヴな考えで行動をしているので行動が結果に結びつかないことが多いです。そして自己嫌悪に陥ってしまいます。この負のスパイラルから抜け出すのは容易ではありません。これはなかなか判断が難しく指導を進める中で「こいつメンヘラだな」と気づくことが多いです。重度のメンヘラはすぐにわかりますが。

 

⑤問題を解く様子はどうか

これは現在の学力をチェックするときにある程度わかります。ポテンシャルの高い人は回答が整理されています。また、わからないなりに色々と書き出して考えている場合もポテンシャルが高いです。そういう様子は問題を解いている様子を観察すればわかります。

 

⑥ハードワークできるか

ポテンシャルが高い人はもれなくハードワークできます。これは①〜④の性格にも大きく関係してきます。①〜④が全てYESの人は、おそらくハードワークできます。①〜④のチェックを補う上でもハードワークできるかは早めにチェックするようにしましょう。後述しますが、初回指導のときに「次回までにこれやっといて」とハードワークさせるのは講師としてマストですね。

 

⑦説明がうまいか

これも初回の学力チェックのときにある程度判断できます。解けた問題を解説させてみればすぐにわかります。このときチェックするのは「答えまでのステップを順序良く、かつ、過不足なく説明できるか」です。普段から考えて勉強している人はこれができます。

 

2.3.2 三流の講師は勉強を教え、二流の講師は勉強方法を教え、一流の講師は生徒自身について教える

これらの指標は初回だけではなく、常に観察していく必要があります。この章の最初に書いた通り、ポテンシャルを決めるのではなく、どう指導するかを決めるためにこれらの指標を使いましょう。どう指導するかというのは、つまり、これらの性質を改善するにはどうすればいいのかを考え、実行することです。

どのテキストをどのくらいやれば良いかは人によって異なりますが、その理由は2つあって、1つは地頭の良さです。これは変えにくいです。もう1つは性格です。物事に対してどういう考え方をするかということですね。性格が悪い人は同じことをやっていても成果が出にくいです。

そういった性質が結果にいかに結びつくのかをわからせることが重要です。そして、その性質を改善するにはどうしたら良いかを教えることが最も重要です。

 

この文書ではその方法をできるだけわかりやすく読者に伝えることを意識して書きました。講師の資質によらず誰でも指導できることを整理したつもりです。

塾講師と言うと勉強を教えると思いがちです。もちろん、時給1500円くらいであればそれで良いと思います。また、少し経験を積むと「勉強方法を教えた方がいい」ということにすぐに気づくと思います。

 

ところが、それでも結果が出ないことがわかってきます。

そして結局、「人間を育てなければいけない」ということを実感します。多くの生徒は怠惰で、集中力がなく、最後までやりきることができません。物事がうまくいくかどうかは、その人の持つ能力というよりも、それらで決まります。

これがわかっているからこそ「1つのテキストを極めろ」となるわけです。

 

まずはやり抜く力が必要です。だからこそハードワークさせるんです。

ハードワークというと精神論だとか、もっと効率の良い方法があると言う人がいますが、多くの受験生は、スタート時点では効率を語れるような段階にいません。

 

まずは「いかに自分がダメか」を知らなければいけません。

 

逆に言えば、この点をクリアしている生徒を指導するのは非常に簡単です。同じ志望校に合格した講師であれば1年目からでも指導できます。でも、残念ながらそういう生徒はほとんど来ません。

実績を積んでいってうまく宣伝すればそういう生徒ばかりを集めることができるようになります。そうやってうまく経営している塾も存在しますね。将来的にはそういうサービスも運営してみたいと思います。

 

2.3.3 ポテンシャルをチェックするときの他の指標

学力的な潜在能力も把握しておかなければいけませんが、これは経験がある講師じゃないと判断できませんが、ポイントは「伸び率がどのくらいか」を考えることです。

例えば、二次方程式の解き方をまったく知らない状態からスタートして、次の指導時(1週間後)に完璧にマスターしていたら、現時点での学力は低いがポテンシャルは高いと判断できる。

逆に、1週間後になって基本的な二次方程式の解き方もあやふやな状態の場合はポテンシャルが低いと判断できます。

 

ただし、後者の場合は注意が必要。1週間めちゃくちゃ勉強したのにできなかったのならポテンシャルは低いと言っていいが、何もしてないからできなかった場合はポテンシャルが低いと判断するのは早計です。

もちろん、ポテンシャルが最も高いのは性格面もクリアしていて、1週間しっかりハードワークできる人ですが。

 

だからこそ、最初の指導時に次回までの課題としてハードワークさせるんですね。これが生徒のポテンシャルを測るために非常に有効です。生徒のポテンシャルはできるだけ早く把握しておいた方がいい。それが遅れれば遅れるほど、生徒のポテンシャルを引き出しにくくなります。

 

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