2016年度の指導まとめ 公立中3Y.Fさん

中3Y.Fさんについて

東京の某公立中学校の中3女子
勉強嫌い(特に主要5科目)
成績は平均で2/5強
進路は早い段階で調理師系と決まっていた
2015年8月指導スタート

Fさんはとにかく勉強嫌いでした。保護者の方が成績が悪くなって心配になり連絡して来て指導をスタートしました。最初の段階で「あぁ、これは時間がかかるな」とわかりました。頭の良さ云々よりも勉強に対する心理的なハードルが高すぎたからです。

最初は宿題も指示していましたが、明らかに嫌そうなリアクションをするので途中からはそういったものは一切触れず、指導時間のみで完結するようにしました。これが結果的にうまくいくことになります。

 

指導形態

メインは数学、ごくたまに他の科目
週1回60分
Skypeによるオンライン指導

公立中学生の1科目の指導は週に1回60分で十分であることがここ1~2年でわかってきました。これは経験値があるからかもしれませんが、ポイントをおさえれば1年目の講師でもできると思います。指導の中身は問題の解き方や考え方を教える「科目指導」がメインですが、思い返せば半分くらいは雑談していたように思います。これも結果的にうまくいく要因になります。

Skypeによるオンライン指導は普通の1対1の個別指導をなんら変わりなく指導できました。Fさんはむしろリラックスできて良いと言っていました。これについては他の生徒も同じことを言っています。家庭教師は自宅に他人を入れるのでどこかリラックスできないことがありますし、塾は塾でリラックスできないということもあるでしょう。

指導科目のメインは数学ですが、たまに他の科目もやっていました。学校の様子や宿題・課題について「何か問題ある?」「俺がやったほうが良いことある?」といつも聞くようにしていました。そうするとFさんから「そういえば学校で〇〇をやった」みたいなリアクションが返ってくることがあります。それに対して私は「それどう?”余裕・普通・むずい”でいうとどれ?」と聞くようにしていました。

Fさんはできる場合はできると言うし、できない場合はできないと言ってくれる人でした。できないと言ってきた場合は「じゃあ、そこ一緒にやってみようか」という感じで指導が進んでいくことが多かったです。

トピックス

指導の過程でこれは良い出来事だなと思ったことをまとめておきます。Fさんは早い段階で進路が決まっていて、しかも一般入試のような試験はないのがわかっていました。

躍起になって学校の試験や入試対策をしなくてもいい状態で指導を行っていたので、その点はあまり評価基準にはならないと思います。なので、勉強に対する姿勢や意識の面で大きく変わったところを中心に取り上げることにします。括弧がついているのはFさん本人の言葉です。一部個人情報が含まれている部分は改変してます。

2016年4月「春休みの宿題がいつもより早く終わった。先生も驚いてた!
2016年4月:自分から質問してくるようになった
2016年5月:「数学のワークはやりたいと思う。解けるからやる気が出る
2016年5月:「初めて数学が面白いと思った
2016年6月:「○○ちゃんに教えてあげた。そして理解してくれた!
2016年9月:夏休みの宿題、いつもギリギリでやってたけど初めて早く終わらせた
2016年9月:夏休みの宿題、初の再提出なし
2016年12月:2学期期末テスト、数学で自己最高得点
2016年12月:2学期期末テスト、主要5科目合計で自己最高得点、全科目合計で自己最高得点
2017年2月:高校合格、指導継続することに

明らかに3年生になってから勉強に対する意識が変わったと思います。特に、課題をやったり問題を解けた時の先生や友達の反応が嬉しかったようです。

それをきっかけに夏休みの宿題もいつもより早めに手をつけて終わらせています。そして、それを自分で誇らしく思えているので良い循環になってるような気がします。ちなみに夏休みの宿題をやれとは一言も言ってません。進捗は聞くようにしてましたが。

そんな感じで勉強に対する意識がポジティブになったFさんは2学期期末テストで自己最高をマークします。しかも数学が最も良い点数で、得意な国語よりも高い得点でした。他の科目もつられて上昇してたのも良かったですね。(具体的な数値は重要ではないので省略します。)

多くの中3受験生は受験が終わると一旦指導を終えるのですが、Fさんは指導を継続することになりました。これは講師としては嬉しい反面、まだまだ力不足だという証拠でもあります。継続してくれるのは信頼してくれているということなので嬉しいですが、1年指導してきてまだ私の指導を必要としているということでもあります。私の中での指導のゴールは、「もう先生の指導は必要ない」と生徒に言わせることです。

 

うまくいった理由

どうしてFさんはうまくいったのか、思い当たるものを書いておきます。

学校ベースの指導
目標を「学校の授業を受けて”ああこれ、こないだHiro先生とやったあれだな”と思えるようにする」ということに設定して指導したのがうまく機能したと思います。以前は「学校の授業は聞いててもわからない、先生の説明が下手すぎてわからない」と言っていました。まずはその状態から脱して授業を受けるのが「苦痛」にならないようにすることを優先したのが良かったと思います。

具体的にどういう指導をしていたかというと特に特別なことはしていません。学校の進捗に合わせてわからないところを解説していきました。基本的には学校のワークや教科書を使い、学校でやった内容をその直後に解説するようにしていました。予習はFさんには合わないと思ったのでしてません。

あと気をつけていたのは「解ける状態にする」ことを意識して指導していましたね。中途半端な状態で学校の授業に送り出すと混乱してしまいさらに悪化するので。

講師をしているとついつい色んなことを教えたくなりますが、Fさんのようなタイプにはこれも逆効果になります。基本的なことに絞って指導し、「Hiro先生とやったところは解けた!」と思ってもらえるように心がけていました。

その他の理由
あまり勉強勉強という感じにせずに適当に雑談しながら指導したのもよかったと思います。FさんはAAA(トリプルエー)やTVドラマが好きだったのでそういう話をしながら、いい意味で適当に進行していたのが良かったのかもしれません。

そもそも勉強嫌いなので、いわゆる学校の先生みたいな感じの雰囲気はダメなわけです。なので、そういう雰囲気は一切排除しました。私はもともとそういう感じなので特に普段と変わったことをしたわけではないんですけどね。

ですので宿題も一切出しませんでしたし、テストの点数が悪くても「まぁしゃーない。そういうこともあるね。」くらいでスルーしていました。逆に自分から進んで課題をやったときやテストの点数が良かったときは「おお、やるやん」みたいな感じでリアクションしてました。

戦略的に褒めるのはあまりよくないので、本人が「やったった感(達成感)」を本当に感じてる時のみ褒めるようにしてました。自分自身も「おお、すごい!」と思ったときに素直にそれを伝えていました。

 

学んだこと

ここではFさんの指導を通じて私自身が学んだことをまとめます。再確認できたものもありますし新たに学んだことも含まれます。

誰でもある程度はできるようになる
Fさんは指導している私も驚くほど成長しました。相変わらず勉強は嫌いと口では言っていますが、自主的に宿題をやったりしているところを見ると明らかに良い方向に変わっています。その結果として成績につながったと思います。

できるようになるには「欲」が必要
少しできるようになると「欲」が出て行きます。Fさんも夏休み明けのテスト後に「ここは惜しかった」「解けるはずだったんだけどなあ」と悔しさを露わにしていました。これが非常に重要だと思います。悔しさは原動力になるからです。このとき私は「その悔しいってのが重要だから。それでいいよ。」といつもの軽いノリで声をかけていました。こういう些細なことの積み重ねが後々効いてきます。

性格が重要
Fさんの場合、公立入試を受けるわけでもなく成績もそこまで関係ないので、一般的な中3受験生のような目標がありませんでした。そういう方向でのモチベーションは働かないのであんまりやる気にならなそうですが、なぜかFさんは徐々にモチベーションが上がっていきました。その理由はおそらくFさんの性格にあると私は考えています。Fさんは明るく気さくに話せる性格なので、会話が弾めば自然と手も動くんですね。

先ほど、雑談したのが良かったと書きましたが、これがうまく機能した理由だと思います。適当に話しながら「じゃあここやってみようか」という感じで、雑談と指導が自然と流れていくのが良かったんだと思います。

既存の塾のようなスタイルの指導は無意味(Fさんのような人の場合)
Fさんが繰り返し言っていたのは、「学校の授業はつまらない。わからない。」という言葉です。そもそも先生の説明がわかりにくいというのもあるようでしたが、それ以前に先生の授業の進行がFさんにとってつまらなかったんだと思います。学校の先生のフォローをするわけではありませんが、これは多対1の指導ではよくあることです。

学校でやってダメなことを塾でやってもうまくいくはずがありません。これを念頭に置きながら指導を続けていました。

何か興味深い話をしていたとしても教室内の多数の人に向けた話し方をしている場合、自分事と思えない生徒が何人かいるのは仕方ないことです。これは先生と生徒の関係だけでなく色々な場面で起こることです。

Fさんに限らずこういったスタイルの指導に合わない人はかなり多いんじゃないかと思います。私自身もそうでしたが、学校の授業は本当に死ぬほどつまらないという印象しかありません。最近は色々変えていこうという動きがあるようなので今後に期待しておきます。

生徒との信頼関係が重要
信頼関係と言っても具体的に何を指すのか難しいですが、「なんでも聞ける」かどうかが1つの指標だと考えています。「わからないけど恥ずかしくて聞けない」とか「こんな基本的なことを質問したら笑われる」とかそういう心理が働いて質問できない人は多いと思います。まずはその心理的な障害を取り除くことが重要です。

どうしたらそのハードルを超えられるか色々考えた結果、とりあえずどんな質問が来ても「良い質問だね!」と答えることにしました。これを続けていくうちにFさんはどんどん質問してくるようになりました。

もう1つ面白い効果がありました。私自身も「どんな質問も素晴らしい質問だ」と思えるようになったんですね。質問の内容というよりも「質問すること自体」が素晴らしいということです。質問してもらうことでFさんがどこでわからなくなっているのか、どういう考えを持っているのか、どこに興味があるのかなど、Fさんのことがより理解できるようになります。

以前から生徒に質問することはよくしていました。これは相手のことを良く理解するためにしていたことですが、相手から質問してもらうことでさらに理解できるようになりました。

質問というのはする方もされる方もお互いに理解が深まるんですね。こういったコミュニケーションを通じてFさんと信頼関係ができていったんだと思います。

 

Fさんへのヒアリング

これを書くにあたって最後にFさんにヒアリングしました。これ結構重要なんですよね。生徒自身が何を考えてるのかを把握しておくのは指導に欠かせません。

Q1:自分の勉強の仕方についてどう思う?
A1:自信が出てきた。
A2:前は覚えようとも思わなかったけど、最近は覚えようと思うし、覚えようと思えば意外と覚えられることがわかってきた。

Q2:勉強への意識は変わった?
A1:最近楽しい。わかる(解ける)と楽しい。
A2:宿題とか長期休暇の課題とかを前より積極的にやるようにしてる。
A3:ちょっとずつでもやれば解けるようになっていくのがわかったし、そうなると自分でやってみようかなと思える。

Q3:周りの人の反応は?
A1:親は特に何もない。
A2:仲の良い友達に「最近点数上がってきたね」と言われた!
A3:前よりもさらに友達に質問されるようになった。

Q4:数学(指導科目)への意識はどう?
A1:だいぶマシになってきた。
A2:自分でワークをやったりするくらいにはなった。

Q5:週1回60分という指導時間についてはどう?
A1:ちょうど良い。
A2:それ以上だと多いし、それ以下だと少ないと思う。

Q6:オンライン指導はどう?
A1:まったく問題なく指導を受けられる。
A2:塾に行く手間が省ける。
A3:送り迎えがないから親も楽。
A4:質問しやすいし、自分のペースでできるのが良い。

 

さいごに

Fさんは一般入試を受けずに高校進学を決めました。これは私にとっても良い経験になりました。すでに書いたようにFさんの指導を通して学んだことは多く、他の人の指導にも活かせています。

一般的な中3受験生は受験を意識するので誰かの指導を受けなくてもある程度モチベーションは上がっていきます。これに関連して私は以前からある疑問を持っていました。

「自分の指導はその生徒にどれだけの影響を与えているのか」ということです。

受験生の指導の場合、指導した場合とそうでない場合でどのくらい差があったのか、ということがわかりにくいんですね。Fさんの場合、一般入試は関係なかったのでその差分を排除して指導結果を評価することができました。結果はすでに書いた通りです。自分で言うのもなんですが非常にうまくいったと思います(最初の数ヶ月はコツをつかむのに苦労しましたが)。

ということでFさんの指導を通して最も利益を得たのは私でした(笑)。

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